心筋梗塞 治療

  治療

 急性期【急激になった時期】

 絶対安静が原則である。発症後急性期【急激になった時期】には致死的不整脈【不整脈には治療が必要なものとそうでないのがあり、致死的不整脈とはほっとくと死んでしまう不整脈】が容易に起こり死亡する危険性が非常に高い。また、虚血【血液の量が著しく減少した状態。】の時間が長引くほど心筋の死滅が進み心機能の不可逆的低下【もう戻らない低下】が進行していく。発病を疑った際は患者から目を離さず直ちに救急車を要請すること、患者の意識が消失し脈拍を触れない際には躊躇せず心臓マッサージを行うことが必要である。機能的な心停止に陥った際には3~5分以上の無処置は社会復帰率【社会へ復帰する率】をほとんど0にしてしまう。救急隊の到着を待たず直ちに救命処置(心臓マッサージなど)に掛かる必要がある。

 心筋梗塞は、心筋に対する相対的・絶対的酸素供給不足が原因であり、安静にして酸素吸入を行う。また鎮痛および体の酸素消費低下目的で、モルヒネを投与する場合もある。急性期【急激になった時期】には心筋梗塞の病巣拡大を防ぐことが最大の目的となる。一般的に「アスピリン内服」「酸素吸入」「モルヒネ」「硝酸薬」などが中心に行われ、Morphine, Oxygen, Nitrate, Aspirinの頭文字をとって「MONA(モナー)」という名称で心筋梗塞のFirst Aidとして知られている。

 発症6時間以内の心筋梗塞の場合、積極的に閉塞した冠動脈【心臓の血管】の再灌流療法【閉塞した血管を再び開通させる治療法。薬で血栓を溶かしたり、手術で開いたりする】を行うことで、心筋の壊死範囲【死んでしまった範囲】を縮小可能である。これに限らず、発症から24時間以内の症例では、再灌流療法【閉塞した血管を再び開通させる治療法。薬で血栓を溶かしたり、手術で開いたりする】を行う意義が高いとされる。大別してカテーテル的治療【カテーテル(中空の柔らかい管)による治療】 (PTCA, PCI【狭くなった血管を拡げ、血液の流れを確保する治療法】) を行う場合と、血栓溶解療法 (PTCR) があり、国により、保険により、医師の判断により治療方針が分かれていることがある。日本では、PCI【狭くなった血管を拡げ、血液の流れを確保する治療法】の可能な施設も多く、急性期【急激になった時期】であればPCI【狭くなった血管を拡げ、血液の流れを確保する治療法】が行われることが多い。ただし、動脈を介した検査・処置であることから合併症も多い。特に心電図上STの上昇が見られた場合、如何に早くPCI【狭くなった血管を拡げ、血液の流れを確保する治療法】を行うかが重要であるが、救急搬入後直ちに同療法を行える体勢を取っている病院は、心臓病治療【心臓病の治療】の先進国である米国でも僅かである[1]。

 狭窄部位が3つ以上であった場合などに、緊急冠動脈大動脈バイパス移植術【緊急にする狭くなった心臓の動脈へ大動脈から血管でバイパス(迂回路)をつくる手術】 (CABG) が行われる施設もある。PCI【狭くなった血管を拡げ、血液の流れを確保する治療法】 と CABG を比較すると PCI【狭くなった血管を拡げ、血液の流れを確保する治療法】 では25~30%再狭窄【狭くすぼまっている】を来すとされていたため、1であっても CABG に優位性があるという説もある。しかし、2004年から薬剤溶出性ステント (drug-eluting stent, DES) が保険適応となり、PCI の成績向上が期待されている。安定期 急性期にインターベンション【皮膚に開けた直径数ミリの穴から細いチューブ(カテーテルと呼ばれる)を血管に挿入し治療を行う治療法のこと】が成功すると、比較的予後は保たれることが多い。安定期には安静、内服加療が中心となり、疾患の特徴上糖尿病、高血圧、高脂血症などが併存することが多いため、これらに対する検査・治療、患者教育などが中心となる。インターベンション【皮膚に開けた直径数ミリの穴から細いチューブ(カテーテルと呼ばれる)を血管に挿入し治療を行う治療法のこと】不成功例、発症から時間が経過していた例などは下記の様な合併症【ある病気が原因となって起こる別の病気】を生じることが多い。