認知症は主にどの患者でもみられる中核症状とそれ以外の周辺症状がみられる。
◎中核症状(どの患者でも見られる症状で脳の神経細胞が破壊されて直接出る症状)
記憶障害【記憶が抜け落ちてしまう障害】
見当識障害【「今がいつか」「ここがどこか」がわからなくなる状態】
認知機能障害【何であるかを判断したり読みとったりする機能が損なわれている状態】
計算する力の低下
判断力低下失語【判断する力が低下し会話や文字でものごとを表現したり、理解したりする能力が部分的または完全に失われている】
失認【まわりの状況を把握する力が落ちていること】
失行【日常生活で行っている動きがうまくできなくなる】
実行機能障害【物事を計画して、実際に行いに移すことがむずかしいという症状】
基本的に認知症ででる中核症状は記憶障害である。
日常生活でのいろいろなできごとなどの経験の記憶(エピソード記憶)よりも今まで得てきた知識、思考の材料になる記憶(意味記憶)が低下する。
記憶力が低下し目の前にあるものが何なのかわからなくなってしまう。そして、計算力が落ちて判断力、行動力が落ちていくというものである。
これらは神経の細胞が抜け落ちることによって発生する症状であり、患者全員に見られ、徐々に進行する。
◎周辺症状【患者によって出たり出なかったりする症状】(BPSD)
主な症状としては
幻覚【まぼろし】
妄想【誤った揺るぎない信念】
徘徊【外に出て、あてもなくうろうろとする】
異常な食の行動(異食症【食べものではないものを日常的に食べる】)、
睡眠障害【よく眠れない】
抑うつと不安
焦燥【焦り】
暴言・暴力(噛み付く)
性的な恥じらいの低下(異性に対して品がなくみだらな発言がよく出るなど)
そもそもある中核症状が
→記憶力の低下や見当識【基本的な状況をとらえること】や判断力の低下を招き
→それにより不安になり、その状況をどうにかしようとおかしな行動をおこし
→まわりとの関係が悪くなり
→さらに不安な状態になり症状がどんどん悪くなるのが原因とされる。
周辺症状は上記以外にもたくさんあり、同時に複数みられたりもする。
中核症状(どの患者でも見られる症状)は初期から重度において段階的に進むのに対して、周辺症状は初期と中等で急に変わることもおおきな特徴である。
初期では不安や気分が沈むといった精神の症状が多く
中等になると幻覚【まぼろし】や妄想【誤った揺るぎない信念】などが現れる。
かつては、中等になると周辺症状【患者によって出たり出なかったりする症状】は急激に現れ、日常生活を送る能力を失い、家族の負担が増すという考えであったが、現在では軽度でも周辺症状がでることが分かってきたため、より原因に目をつけるとしてBPSD(Behavioral 行動 and Psychological 心理学 Symptoms 症状 of Dementia 認知症 →認知症の行動的および心理的症状)という表現が用いられるようになった。
激しすぎる周辺症状が出た場合、病気により認知能力が低下したことによる不安による行動なので、その不安を取り除くことが基本となり、
向精神薬等【中枢神経系(神経系の中で 多数の神経細胞が集まって大きなまとまりになっている領域)に効く、生物の精神の行いに何らかの影響を与える薬の総称(まとめて呼ぶこと)】
を用いて
鎮静化【患者さんの苦痛や不安を和らげること。おもに薬を与えることによって意識を低下させること】
も選択にはあるが、第一選択ではない。
中核症状の進行を止める方法はいまだないが、適切なケアで周辺症状を抑え、終末期を迎えることもあるので、初期の適切なケアが需要である。
その他の症状
実臨床【実際の現場】においては、アルツハイマー病と白質型多発性脳梗塞の合併【複数の会社を1つの会社にする】が多く、後者では歩行障害【歩行の障害】(パーキンソン症候群【パーキンソン病に似ているが異なる病気の集合体、またはパーキンソン病とよく似た運動障害症状全般】。
実際の現場では、アルツハイマー病と白質型多発性脳梗塞の合併が多い。
アルツハイマー病【不可逆(反応に対し逆の反応が起きない)に進む脳の病気で、記憶や考える力がゆっくりと落ちていき、最後には日常生活の最も単純なことを行う力さえも失われる病気】
白質型多発性脳梗塞【ラクナ梗塞(脳の奥の細い血管がつまるタイプの脳梗塞)が両側半球(右半球(右脳)と左半球(左脳))に少しずつ多く発生したもの】
後者では歩行の障害、および排尿の障害(障害が進むと尿をもらす)がしばしばみられる
レビー小体型認知症【脳に「レビー小体」というたんぱく質のかたまりができて認知症(何かの病気によって脳の神経の細胞が壊れて起こる症状)となる】
では、認知症【何かの病気によって脳の神経の細胞が壊れて起こる症状】
幻覚妄想【まぼろしや誤った揺るぎない信念】
と共に、歩行の障害、
過活動膀胱【尿があまりたまってなくとも膀胱が収縮する】
を含めた
自律神経障害【自分では動かせない内臓や血圧(血管の内側の血がもつ圧力のこと)や体温などを調整する神経の障害】
がしばしばみられる。